医療構造改革の本当の意味
【平成14年7月9日】

  今、国会では「医療構造の根本的な改革」を審議している。与野党の質疑を聞いているが、これほど反対意見の多い審議は無いと思う。景気低迷の中で、社会保障制度の医療問題がテーマになっている。国民は勿論全医師会与野党国会議員まであらゆる人が反対している。更に、介護や福祉まで負担が増加することが予測されている。野党はこの法案審議の引き延ばし作戦に切り替え、採決時に野党が欠席状態で衆議院同様、与党が強行採決して国民に対してのイメージダウンを狙っている。だから、委員会での野党の質問内容は国民の立場を思いやる質問ではない。失礼な言い方かもしれないが、単なる時間潰し的な質問をしている。次国会では介護保険・年金制度なども負担が増える年金の空洞化は若年労働者の間で進んでおり、リストラされた人や大学卒でも就職できず、フリーターとして社会保障費を払わない人が増えつつある。それなら「社会保障制度」を全て無くしてしまったらどうだ!と云いたくなる。高齢社会が最高になる2025年には社会保障制度費で給与の50%以上も引かれると予測されている。いずれは3割負担となるのは時間の問題である。ならば、医療ばかりではなく社会保障制度全体を無くしてしまえば、働いた給与は全部受け取れる。世界中で日本にしかない「国民皆保険制度」を無くして欧米諸国並にしてしまえばそれで済むことである。では、何故このようなことが今騒がれているのだろうか?全て無くせば、医療機関にかかる時は100%の支払いになり、3割が良いの悪いのと言って騒いでいるところではなくなる。

  では一体何故、この不景気な時に「医療法の一部改正案」を無理して審議しているのだろうか?考えればすぐ分かる問題である。過去2回の医療法開始得は中医協で決めた診療報酬誘導型の改正であった。H.2年にゴールドプランが提示され、H.4年に訪問看護ステーション(独立採算制で医師から独立)と在宅介護支援センターがスタートした。介護保険ができた時は”病・診連携”や”病・病連携”が提唱され、なるべく在宅医療を推進するようセットされた。しかし、殆どの開業医や病院は自分が診ていた患者を「地域で診る」という気持ちにはならなかった。退院した患者を”かかりつけ医”となって往診し、後は自分のところの看護師が訪問し、継続看護で間に合わせた。これを見過ごしたのが、医療費増加の原因となった。介護施設はドンドン建てられたが、入所者が少なく反対に在宅患者を掘り起こしてしまった。だから介護保険で医療費が減少すると計算したのが裏目にでた。医療費は一気に上昇してしまった。一般病院を急性と慢性(社会的入院)に分けないで、病院に混在されたのも誤算であった。その上、介護保険対応の老健施設の低減制を廃止したのは穿ってみれば病院潰しの一石のような気がする。医療費削減のためには一番手っ取り早い。

  今回の「医療法一部改正案」は既に4月からスタートしてしまっている。内容は医療費の一部に縛りが入り、減点法が採用されていることが特徴である。病院では平均在院日数が14日以内では満点をもらえるが、延長すると減点され、28日を過ぎると極端に下がる。しかも、紹介患者数(80%では4,000円加算〜順次20%では750円と細分化されている)で初診料が変わるので、病院は入院患者の早期退院を評価している。また”病・診連携”してないと、採算が取れなくなり、慢性病院化せざるを得ない。一方、介護保険施設は低減制が無くなったので超満床である。或る一定期間入院したら退院を強制させられ、直接家庭に戻ることになり、夫婦共稼ぎ世帯はいきなり患者が戻ってくることになる。大変だと思うが、医師会が今までの医療法改正に対応して居なかったから、このようになった。私もこのような改正だったら当然反対した。しかし、既に4月からスタートしてしまっているのだから、何とか対応策を考えなければならない。しかも、10月から1割定率負担を一旦支払うとなると、患者にとってはさらに負担がかさなる。大学病院などで、大手術したらその1割は大変な負担である。それよりも何よりも、いきなり要介護老人が家庭に帰ってきたら、一体どうするつもりなのだろうか?看護知識のない人達はどう対応していけば良いのか?

  今回の小泉改革はその辺を問いかけて、医師に対する意識改革を求めている。参議院での審議も時間的制約があるため、いよいよ本案も大詰めとなっている。さあ、どうなるか!! 私も議員として医師として病院経営者としてこのジャッジ(採択)に重い一票を投じたい・・・。

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