社会保険制度について

 同法案は医療提供者や患者など殆どの国民が反対する中で、7月2日総理同席のもと参議院厚生労働委員会は審議入りした。最初から委員会に総理同席で直接質疑するのは非常に珍しい。通常は専門委員会で審議し尽くしてから最後に総理出席で政治的決断を求めるのだが、これでは結果が出てしまっている。
 その主な内容はサラリーマンの3割負担と医療保険料が82%(現在75%)にすることである。この法案は既に衆議院で自民党単独強行採決し、参議院に送られてきた。従って修正することになると再度衆議院で再審議しなければならない。会期切れになると、廃案になるか継続審議となる。国民が反対している方に迎合し、次の選挙で与党に逆転しようという野党の作戦が現れている。少子高齢化を目の当たりにして、医療費は毎年1兆円以上づつ増加している。このままでは医療保険制度は壊滅してしまう。日本医師会も「2015年医療のグランドデザイン」で、医療費は現在の30兆円から倍以上の60兆円になると試算している。しかし、現在の景気低迷の中で、10年後に医療費が倍になったら負担するのは一体誰なのだろうか?この景気低迷下で種々の負担額が増加すれば国民の将来の明るさはとても感じられないと思う。企業も会社の存続を掛けて経営努力しているが、それでも倒産やリストラなど厳しい選択を迫られている。少子化ばかりではなく、労働人口全体が減少し、政府管掌保険や健康保険組合の加入者が少なくなり、現状の社会保険が成り立たなくなっている。しかも、中医協の合意で4月から医療費は改正され、全ての保険点数は低く設定された。更に、10月から償還払いの制度が施行されようとしているのである。
 (注)今迄は高齢者の外来の負担上限額は3,200円(大病院:5,800円)、入院は37,200円だったが、定率1割の負担金を一時立て替える制度になり、外来の上限が12,000円:入院は40,200円になる。低所得者と高額所得者は別に定められている。一時窓口で支払い、過払い分は地方自治体で計算し後で患者に払い戻される仕組み。70歳未満外来上限は40,200円:入院は72,300円。

 

●そこで、医師として病院介護保険施設等の経営者として、また国会議員として、次の点を申し述べたい。


1.今回の医療法改正について

 現状のままでは約8割の”支払い基金”が潰れてしまう。日本にしかない国民皆保険は崩壊するであろう。その対応策のひとつとして、今年の4月から先ず保険点数が下げられた。これで”基金”は幾らか生き延び、10月から患者負担が導入され、なんとか存続可能になる。その後、高齢者は1割負担で家族は3割負担になる。現在、サラリーマン本人は2割負担であるが、来年4月からサラリーマンの3割負担になると、1割上積みすることによって、年間約4,000億円の医療費が捻出できる。単なる数字合わせかも知れないが、何とか国民皆保険制度は維持できる。しかし、その次の年には又1兆円以上の医療費が必要であるから、更に何とかしなければならない。そこで今年の4月に仕組んだ保険点数で病院自身が潰れる可能性が出てくる。また国公立病院は特殊法人となり社会保険病院などは統廃合される。大学病院や民間病院も潰れるか生き残るか?H17年以降は医療機関自身の存続が問われる時代になる。



2.高齢者医療保険の新設

 高齢者の医療費が高く、末期患者の医療費が若年者の5倍も掛かっている。そこで、来年度以降は新しく、75歳以上の「高齢者医療保険」がスタートする。75歳以上の高齢者が年金から5%を拠出し、患者が5%を負担し、政府拠出金9割で創設する。この財源は税で賄うが、恐らく消費税がこれに充てられるのであろう???



2.来年は介護保険制度の見直し

 介護保険が1999年からスタートしたが、既に2年目で財源は底をついている。”ゴールドプラン21”により、介護施設はドンドン創設されている。その分だけ介護保険費用は不足している。わずか2年目で破綻というのではあまりにも無謀な話である。結局、市町村の広域合併により地域ケアの介護保険制度は広域化し、その分介護保険費が増収されるという策を講じるしかないのである。合併しないと介護保険費は不足するので、在宅が主体となりサービスは低下する。住民はサービスのよい他の市町村に転出する事態も起こりうる。介護保険は各自治体が決めるので、市町村で明らかに差がでてくる。


4.障害者プランとエンゼルプラン

 現在施設に入所している障害者は措置費(税)で扱っていたが、来年から支援費制度といって一部有料になる。当該者は市町村に申請して査定を受けてサービスを受けられるようになる。またしても国民に負担が掛かることになる。
 一方、エンゼルプランは市町村の自治義務で、男女共参面型社会の共稼世帯では子供を預かって貰う施設が必要で、受益者は応分の負担となる。


社会保障制度(特に年金のあり方)を総合的に検討

 来年は年金のあり方を考えなければならない。今迄の賦課方式で果たして良いのだろうか?今後の問題であるが、若年労働者の30%は空洞化している。アルバイトやフリーターなど定職を持たず「年金」など関係ないと認識している若者が多い時代となっている。
 政治家は(与野党)の国民不在の駆引きをしている場合ではない、党派を超えて真剣に取り組まなければならない時期にきているのである。

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