日本総合研究所主催のセミナー「認知症高齢者に実施できる摂食・嚥下評価とリハビリテーションの実際」に参加した
ので、以下に報告する。
現在、65歳以上の高齢者のうち推計15%、約462万人が認知症を有すると言われている。認知症の中でも、脳血管型認知症、レビー小体型認知症では、早期より嚥下障害が起こることが多く、アルツハイマー型認知症の末期では、嚥下性肺炎が死因となることがしばしばである。そのため、認知症のタイプを知っておくことが非常に重要である。また、症状は個人差、日差・日内変動、相手による変化が大きく、一人ではなく複数名で評価をする必要がある。
認知症患者の食事場面では、しばしば「食べようとしない」「飲み込まない」「食事動作が持続しない」といった状態が観察される。原因としては、情動性不安定、不安、注意転動、焦燥感などが考えられる。
ケアのポイントとして「食べたいと思う環境づくり」が挙げられる。そのためには、美味しいと知覚できる食物や本人の好物を提供すること、見た目でも美味しさを演出すること、美味しい食事を共に堪能できる仲間や家族との語らいの場を設けることが効果的である。また、「自らの力で食べる」ことができるように待つ姿勢を持つことも大切であり、目で見たり手で持たせて食事動作へとつなぐ働きかけをタイミングよく行う必要がある。食欲を起こさせるためには、適度で適切な日中活動・コミュニケーション活動も重要である。軽い疲労がある程度まで活動負荷を増やしたり、自らの意志で活動できるように日中活動に選択肢を設けたり、不穏・孤立がある方には集団活動への導入をすすめると良い。
演習では、ペアになり相互に食事介助を実施した。不良肢位での摂食やアイマスクをした状態での摂食、嗅いでいた匂いと異なるものが口に運ばれたり、介助者のペースで次々に食物を口に入れられるという体験をした。いずれの場面でも、食事に対して「こわい」という感覚を覚え、自然と口を開けるのをためらっていることに気付いた。良好肢位で摂取することが安全に食事をするためにいかに大切であるか、感覚情報が摂食行動にいかに影響しているか、適切な量・ペースで介助することの重要性を改めて痛感した。
リハビリテーション手技として、口腔ケア、呼吸訓練、咳嗽訓練、発声訓練、喉頭閉鎖強化訓練、咀嚼訓練、反射促通、姿勢調整法、食形態調整法などを学んだ。VTRにて実際の訓練場面を見せていただくことができ、大変勉強になった。
今回のセミナーを通して、認知症患者の心に少し近づくことができ、これまで課題となっていた問題への解決の糸口がみつかったと感じる。学んできたことを早速明日からの業務に生かし、日々精進していきたいと考える。
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