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期 間 |
平成24年1月8日(火)・9日(水) |
場 所 |
レム日比谷 |
参加者 |
薬剤科 科長 川田敏雄 |
研修内容 |
平成25年1月8日(火)〜1月9日(水)、社団法人日本感染症学会主催の平成24年度院内感染対策講習会が開催された。
1.抗菌薬の適正使用(薬剤の選択と投与計画)
抗菌薬を投与する前には2つの重要なステップがあり、第1は、感染臓器を見つけること、第2は、原因微生物を推定することである。抗菌薬適正使用の大原則は、(1)早期に投与を開始する、(2)適切な投与量を選択する、(3)重症例等の経験的治療では、de-escalationのストラテジーに基づいて、データをみながら狭域抗菌薬に変更する、(4)早期に中止する、の4項目である。適正な抗菌薬選択基準として、@原因菌に有効、A副作用が少ない、B常在菌叢を攪乱させることの少ない狭域スペクトル、C医療経済性(安価)、D臓器移行性の5つの条件を考慮する。抗菌薬のPK-PD理論の臨床応用は、抗菌薬適正使用にあたってのツールの一つであり、有効性を高める、有害事象を少なくするないしは防止する、薬剤耐性菌の発現を抑制する、医療経済性に優れた投与法を行う、などのメリットがある。重症・難治症例では、de-escalation療法が望ましいが、de-escalation療法を行う際には、培養検査、薬剤感受性検査が必須である。CPR、プロカルシトニンなどの炎症マーカーだけを抗菌薬中止時期の判断材料としないで、臨床所見もあわせて総合的に判断する。真菌症では、血液培養陰性化後2週間の抗真菌薬の投与が必要である。
2.アウトブレイク対応の実際
アウトブレイクを警戒すべき疾患および症状として、感染症による下痢および嘔気・嘔吐、食中毒、インフルエンザ、疥癬、急性ウイルス性肝炎、結核などが存在する。また、微生物はMRSA、クロストリジウム・ディフィシル、結核菌、マイコプラズマ、ノロウイルスなどが挙げられる。アウトブレイクの定義は、@単位期間当たりに期待値以上の発生件数があった場合、A適切な感染予防策を実施しても、なお新規発生が継続する状態である。
アウトブレイクの発生が疑われる場合には、直ちに感染管理の実施責任者が現場に赴き、発生現場の責任者から発生状況の詳細な聞き取り調査を実施する。アウトブレイクの同定のために必要なポイントは、@感染者・保菌者の疫学的関連性の検証、A臨床経過(潜伏期・感染可能期間)と拡散経過の一致性、B生物学的特性(抗菌薬感受性パターン、血清型、遺伝子型)の同一性の検証、C院内侵入経路と拡散ルートの推定、D院外での発生状況との比較参照である。アウトブレイクミーティングを開催し、対象事例を一部署あるいは一診療科の問題レベルから、病院全体の危機問題へと格上げすることができる。また、感染源の隔離と病室閉鎖、手指衛生・標準予防策の直接監査と再徹底、環境監査と改善指導、適切な感染経路別予防策の選定と実施など、必要な介入策を決定する。
曝露した職員・患者への対応は、予防投与・予防ワクチンの実施、現場の職員への対応は、ワクチン摂取の実施、二次伝播予防策の徹底、体調管理と発病時の対応の指導を行う。 |
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