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協和中央病院は茨城県の西部、南に筑波山を仰ぎ、鬼怒川が流れる自然豊かな農村地帯にあります。患者さんの多くは農業関係者でしめられ、都会の雑踏と比べればまさに健康には恵まれた生活環境の真只中にあると言えます。
しかし、私が協和中央病院に赴任してからの約10年の間、生活習慣病関連疾患が明らかに激増しています。
目次→生活習慣病ってどんな病気? / あなたの生活習慣病危険度をチェック / 予防をするには? / 今回担当の先生
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生活習慣病ってどんな病気? |
生活習慣病にはいろいろあります。中でも肥満が招く生活習慣病の数は多く、高脂血症、高血圧、糖尿病がその代表例です。この3つの病気は、最初の数年間はまったく自覚症状がないのが特徴で、そのままにしておくと下の図のように体が不自由になったり、死につながる可能性もある病気なのです。 |
内因 |
遺伝的要因 |
外因 |
生活スタイル |
・運動不足 ・不規則な生活時間・ ・脂肪や糖分過多の食生活 ・喫煙による活性酸素の増加 |
高脂血症 |
高血圧症 |
糖尿病 |
血液中のコレステロール・中性脂肪の量が多い状態 |
血圧が高い状態 |
血液中のブドウ糖(血糖)の量が多い状態 |
動脈硬化 |
動脈の壁にコレステロール(悪玉)や死んだ細胞などがへばりついて、血管が細くなったりもろくなったりする状態 |
虚血状態または破裂 |
虚血 |
動脈硬化が起こる位置により異なるが、各臓器への血流が不十分になり、その部分が機能しなくなる。 |
つまる・破裂 |
血管が完全につまると、血液が行かなくなった臓器などは壊死してしまう。弱くなった血管が破裂してしまい、体内で大出血を起こす。心臓や脳などでこれが起こると死亡することが多い。
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体内の老化が進み寿命も短くなる |
脳 |
脳血管性痴呆=脳卒中などが原因で、脳細胞の一部が死滅し、痴呆が起こるケースが多いが、脳のあちこちの比較的細い血管に動脈硬化がある場合、脳卒中の目立った症状がないまま痴呆を起こすこともある。 |
眼 |
網膜症=糖尿病の合併症。網膜の毛細血管が障害され、失明することもある。 |
心臓 |
狭心症=心臓をとりまく冠動脈が動脈硬化を起こすと、心筋に血液や酸素が届かなくなり機能低下を起こしてしまう。 |
下肢動脈など |
間歇性跛行(かんけつせいはこう)=下半身の動脈硬化によって、歩くと下肢の痛みやしびれを生じる。50〜70歳代の男性に多い。 |
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あなたの生活習慣病危険度をチェック |
生活習慣病は40歳以降に発症するケースが多いです。以下の項目の中に、半分以上心当たりがある 人は、現在は大丈夫でも将来病気に悩まされてしまう可能性が高いのです。特に、すでに肥満の人は病気の発症も早くなる危険性があります。これを機に少しずつでも生活を見直すことをお勧めします。
生活危険度チェック
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□仕事が忙しく、外食が多い
□毎日、ジュースを1缶(350ml)以上飲んでいる。または、おやつに甘いものは欠かせないタイプ
□毎日、日本酒2合以上(ビールなら大ビン1本以上)飲んでいる
□朝食を抜きにすることが多い
□夜のおやつ、または夜食をとるのが習慣になっている
□「最近ストレスがたまっているなあ」と感じる
□1日1時間以上歩かない。自分でも運動不足だと思っている
□たばこを吸う |
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チェック1〜3の解説 |
外食は脂肪を多く含む高カロリーのものが多いため、肥満を招きやすい。特にハンバーガー類、揚げ物などに注意しましょう。糖分やアルコールもとり過ぎると肥満のもとです。また、血液中に糖分がたまり過ぎる"糖尿病"の原因にもなります。砂糖は1日20gくらいまでが適当とされていますが、缶ジュースによっては、
1缶でそれ以上というものもあります。甘いお菓子なども同様に注意してください。アルコールは、チェック欄にある通り1日に日本酒で2合くらいまでが健康な飲酒の限界です。 |
チェック4〜5の解説 |
「肥満解消には食べなければいいだろう」なんて、朝食を抜いたりするのは厳禁です。夜食として食べた甘いものは寝ているうちに脂肪に変わってしまうのに対し、朝食を抜いても脂肪が減ることはないようです。これは実験などでも証明されています。 |
チェック6〜8の解説 |
普段は脂肪細胞内に貯えられている中性脂肪は、ストレスを感じて心拍数が上がることにより、血液中に放出されます。この繰り返しによって血液中の中性脂肪の量が増え、動脈硬化などを引き起こす可能性があるのです。適度な運動は肥満解消だけでなく、ストレス解消にも効果があります。最後のたばこも動脈硬化などを引き起こす危険因子です。肥満で血液中に中性脂肪が多い人が喫煙すると、さらに危険が増すという説もあります。 |
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予防をするには? |
先日、東京から栃木県のある農村の病院に転勤して来た医師と話す機会がありました。その人によると東京と比べて田舎の方が顕著に生活習慣病は多く、また重症であるとのことでした。常識的に考えれば都会の交通地獄、通勤ラッシュ、空気汚染等からして都会の人の方が田舎の人よりもはるかに健康を害する要因が多いように思われます。しかし、現実はまったく逆のようなのです。
農村はこの数十年で急激に車社会と化して来ています。田舎では遠い近いを問わずどこへ行くにも車を使います。道を歩いているのは学生ぐらいで他はほとんど見かけられません。都会の人は整備された交通機関がある為、車よりも電車等を利用しているようで駅の階段を含めかなりの歩行を自然に行っており、これが健康に良い適度な運動療法になっているのではないでしょうか?
農村は急激に近代化が進み生活水準も都会とほとんど差がなくなってきている今日、田舎に居住するわれわれは、運動不足を再確認し、日常生活に歩く習慣を積極的に取り入れることが急務と思われます。
生活習慣病の予防、治療上、運動療法はもっとも重要で効果のある治療法と言われております。また、協和中央病院の内科の診療では随時、的確なアドバイスを行っておりますので、心配な方はどうぞ外来にお越しください。
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『生活習慣病のお話』担当先生 |
内科部長 玉野 雅裕(たまの まさひろ) |
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昭和33年生まれ 昭和60年 獨協医科大学医学部卒業 医学博士 日本内科学会専門医 【専門】循環器 内科 |
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